空蝉橋 梗概 修正

東京下町の子供たちの悪戯遊びと喧嘩が織りなす冒険物語。一九六〇年代始めの七月、夏休みに入る前の三週間に起きた出来事である。木村潤は小学生時代の同級生だった林久美子の通夜に出席するため単身赴任先の長野から山手線の大塚駅に向かった。駅の陸橋からホームを眺めていると、死んだはずの同級生クジラの姿が見えた。約四〇年前、小学校六年当時のクラス仲間だった住友浩一と鯨丘祐二の三人組で遊んだ駅周辺だったが、事故で死んだクジラと彼の父親に殺された高利貸しの記憶が同時に蘇ってきた。
夏休みの直前、集中豪雨のため山手線大塚駅近くの陸橋(空蝉橋)の崖が崩れた。広大な土砂がむき出しになって崖は斜面に変貌し、子供たちの格好の遊び場所になった。彼ら三人組は崩れた土砂の中にブリキ缶を発見した。中にはメンコ、ベーゴマ、切手帳、ヌード雑誌などに混じって盗品と思われる高価な時計や貴金属それに拳銃が入っていた。三人組は思いがけない発見に驚愕したが「財宝」を分け合い、「武器」入りのブリキ缶を橋の下に隠し直した。
空蝉橋は文京区と豊島区の境界で、文京小学校と豊島小学校の子供たちのテリトリーが重なる地域でもあった。「財宝」は豊島小の不良グループが隠したもので、彼らは急に羽振りが良くなった文京小の三人組を疑っていた。三人組と同じクラスの富田も彼らの高価な持ち物に気づき興味を抱いた。富田は彼らに近づき仲間に加わったが実は豊島小グループのスパイだった。
文京小グループの三人組は執拗に豊島小グループから行動を監視された。ついには喧嘩を仕掛けられ、見つけた遊び場をことごとく彼らに奪われてしまった。文京小グループは復讐計画を立て大塚駅の縁日の夜に決行された。三人組で仕組み豊島小のリーダーを金魚すくいの最中に押し倒し神社の境内に誘き出した。縄を仕掛けて転ばせ袋叩きにして彼らに壊滅的な打撃を与えた。
一学期の終業式の日、木村潤は橋の下に隠してある「財宝」見せようと、クラスの女友達の林久美子をさそって空蝉橋にでかけた。他の仲間も来ていたが様子がおかしい。隠してあった「財宝」はすべて何者かによって持ち去られていた。確たる証拠はなかったが、三人組は豊島小グループが奪い去っていったに違いないと思った。
三人組は当然のごとく奪われた「財宝」を取り返すべく豊島小グループに迫ったが、彼らには不良の中学生が加勢に来ていた。体勢が不利なため三人組も中学生の先輩で喧嘩の強い福井健の応援を頼んだ。不良の中学生がナイフを持ち出して斬りつけたため大人数での乱闘になった。喧嘩がエスカレートし子供たちが急坂を転落して山手線の線路内に入るのを駅員に見つかり線路上を追いかけられた。
貨物線路上を逃げたのは木村潤と福井健それに林久美子だった。貨物列車の線路を池袋方向に逃げたが、貨物列車が迫ってきていた。運転手に見つからないように脇のドブ溝に隠れた。逃げおおすことができたが、側溝の汚水で三人の体は泥だらけになっていた。近くの区民プールに進入して体を洗い神社の空き地に捨てられていた籾殻で体を乾かした。
林久美子は家に帰したが、捕まるのが怖くて、木村潤と福井健は近くの寺の境内に隠れた。本堂床下に座り込みトランジスタラジオで音楽番組を聴きながら過ごした。寝入ってしまうと夜中突然、お墓に住むという噂の「おけいちゃん」との出会った。一見酔っぱらいの老人だが、経験豊富で話が弾む。そのときラジオのニュースで乱闘の後、クジラが山手線に轢かれたというニュースをラジオで聞いた。木村順と福井健は信じようもない出来事に気が動転するがおけいちゃんに「焦ることはない。時間はたっぷりある。常識に従って行動しろ」と説得されて家路についた。福井健は警察に捕まり保護観察処分になった。じゅんはケガなかったが警察に補導されて調べられ、校長室で何人もの教師から母親と一緒に大目玉を食った。住友は逃げる途中、橋から転落して大けがをして入院、そして鯨岡祐二は轢死した。
林久美子もやはり事故死だった。鯨岡と同じ大塚駅のそばのホテルだった。木村はホームで見た人影はやはり鯨岡の亡霊で、林久美子の通夜に来たのだと思った。

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