第十章 決闘の日 

第十章 空蝉橋の決闘

1

その日は一学期の終業式だった。待ち望んでいた夏休みの始まりで気持ちは高ぶっていた。そんなそぶりを見せていないようなやつも多い。「学校があるほうが退屈しない」などと信じられないことを言う輩もいる。わたしにとっては一年間で最高に楽しい瞬間だった。一学期の成績なんてどうでもいい。ふつう程度の勉強すれば問題ない。気になるのは通信簿に書かれた担任からの一言だったが、そんなことは夏休みが始まろうとしている有り余る自由で膨大な時間の前にはどうでもいいことだった。

手始めにその日は健ちゃんの家で泊まり込むことにしていた。母親は反対したが健ちゃんの父親からの直接のお願いもあり外泊が可能になった。健ちゃんの父親は一週間の出張で、監視役を兼ねた遊び相手としてわたしが必要だったのだ。もろもろは近くに嫁いでいる姉の珠恵さんが面倒を見てくれる。夕食の準備をしたあと珠恵さんは帰る。今晩はわたしが泊まることになったので二人分の夕食を用意しておいてくれているはずだ。健ちゃん宅での夕食の前に、みんなと午後に空蝉橋で遊ぶ約束をしていた。

「崖崩れってそんなにひどかったの?」久美ちゃんが聞いた。

「ああ、応急工事をしただけで、まだそのままだからいい遊び場になってるんだ」

その日は終業式の後、空蝉橋の遊び場を見せようと林久美子にも声をかけて連れてきていた。

「たのしみね。ほかに誰か遊びに来るの?」

「うん、住友と、クジラが行ってると思う」

「いつものメンバーか。仲がいいのね」久美ちゃんが退屈そうに言った。

「それに、ものすごい宝物もある」気がとがめたが久美ちゃんの気を引くため秘密を漏らしてしまった。

「宝物って?」

「ああ、ブリキ缶に遊び道具がいっぱいさ」

「ブリキ缶に?」

「だから、この夏休みはここでどんどん遊ぼうよ。崖の修復が本格的に始まったらそれまでだけどね」わたしは得意げに言った。

「つかの間の楽しみってっわけね」

「夏休みは明日から、長いんだ。それに工事はなかなか始まりそうもないしいっぱい遊べるよ」

「今年の夏休みは、短いかも」

「なんで? この猛暑なのに」

「ははは、そうじゃなくて」久美ちゃんは思わせぶりに笑いながら言った。区民プールから右に折れると崖崩れ現場が見えてきた。

「だから、どうして」

「忙しくなりそうだし」久美ちゃんが言いかけたとき、クジラが息を切らして崖の下から重力に反して駆け上がってきた。足の回転は忙しいのになかなか近づいて来ない。

「おい、全部なくなってる、おまえどこかに移したのか!」クジラは相当慌てていた。久美ちゃんの存在も駈けてきたときに野球帽を風で飛ばされたことも気がつかなかったようだった。

「なんのことだよ」

「だから、オレたちの宝のことだよ、何処か他に隠したとか」

「いや、なにもしてない」

「なんてこった!」クジラは目を丸くした後、眉間にしわを寄せそして肩を落とした。

「住友は?」わたしは聞いた。

「下にいるよ、橋の下の隠し場所に」

「久美ちゃん、ここで待って、見てくる」そう言って、わたしは滑らないように腰を落として注意深く崖を降りた。クジラも後からついてきた。住友が顔をしわくちゃにし生活指導の先生のように腰に手を当て考え込んでいた。

「おう、大変なことになってるよ」わたしを見つけると住友が言った。

「なくなってるって、ブリキ缶ごと、全部?」

「じゅん、おまえ、隠してないような」疑り深く念を押した。

わたしたちが掘った縦穴の中は空だった、それにゴミが入れられている。おまけに水か小便がかけられたような後がある。

「まだ、濡れている、犯人は近くにいるはずだ」刑事のような口調で住友が言った。

「どうする」

「探そう」

「どうやって」

「この場所はオレたちしか知らないはずだよな」

「ああ、でも豊島小学校の奴らは昨日も来てたし」

「探し出したのかもしれない」

「奴らに決まっている」わたしたちはたぶん同じことを考えていた。

2

わたしたちが義憤に駆られて、犯人探しに出かけようと立ち上がり橋の上を見ると豊島小学校の連中が四、五人が柵にひじをつきながらこちらを見下ろしてていた。ニヤニヤしているやつもいる。

「あいつら」住友はうなるように言った。

彼らは楽しげにわたしたちがあわてて右往左往しているのを見物していた。犯人は奴らに違いないと確信した。ともかく、わたしたちは線路から崖を息を切らしながら登った。そこでわたしは信じられない光景を見た。富田がいた。富田が豊島小学校の連中と一緒だった。わたしたちを見て静かに笑っていた。

「おい住友、見たか?」

「ああ、あいつが教えたんだ」

「こすいやつだ」

「富田のヤロー許せない、ぶっ殺してやる」住友が一番興奮していた。

住友が最初に上までたどり着き、橋の欄干にたむろしている奴らに向かった。

「おい、おまえら話がある、こっちに来いよ」住友が興奮しながら小川に声をかけた。わたしも住友に続いた。そしてクジラが最後に上がってきた。

「なんか文句あるのかい、おにいちゃん」一番体のでかい小川が橋から崖上の方まで降りてきた。

「富田、出てこい!」住友が言った。

「卑怯だぞ、おまえのやったこと言って見ろ」わたしも応した。

「汚いやつだ、出て来いよ」クジラも思いっきり大きな声を振り絞るようにして叫んだ。

富田は薄笑いを浮かべて前に出た。

「おう、みなさん、段ボール滑りの調子はどうかな?」

「ふざけるなよ、オレたちの隠したもの何処にやったんだよ」

「何のことだかぜんぜんわからないよ」富田が小川の方を向いていった。

「おまえたち人のものかすめようなんて、泥棒よりたち悪いぞ」小川が言った。

「ともかく、富田と話がある、こっちへ渡せよ」

「どうする、富田?」小川が富田に聞いた。

「あいつらとは遊びたくない」

「やだってよ」

「てめーらふざけんなよ、盗んだもの全部返せよ」ついに住友がぶち切れた。

「おまえらこそ、くすねたもの出せよ。万年筆、時計、何処やったんだよ」富田が言った。

「汚い奴らだ。盗んだやつ出てこい」わたしはありったけの声で叫んだ。

「盗んだやつ出ろってよ」

「何のことだかさっぱりわからねえ」彼らは口々にはぐらかすような口調で絡んできた。

「うるせーな、テメーらやる気だな」住友が言い、殴りかかろうとして一歩前進したとき、グループのうしろから中学生の深沢が出てきた。わたしが殴られたときいたやつだ。あいつが出てきたら絶対かなわないと思った。

「てめえら、なにぐずぐずいってんだ! 早くおうちにかえってお母ちゃんのオッパイでも吸ってろ」甲高いが迫力のある声で深沢が言った。

「なんだよ、よけいなやつはひっこんでろ」住友はヤツの恐ろしさを知らないのだ。中学生に大きな口を利いてしまった。

「何もたもたしてるんだ、やるならかかって来い」

「やらないなら早く帰りな」次々に挑発してきた。

住友は、わたしに小声で「健ちゃんに電話して来てもらえ」と耳打ちした。 わたしは何も返事せず、急いで近くの電話ボックスに向かってかけだした。電話ボックスの前に来てポケットに十円玉がないのに気がついた。後ろを振り返ると久美ちゃんがいた。

「どうしたの、じゅんちゃん」

「うん、ちょっと」

「喧嘩になりそうなの?」

「うん、久美ちゃん十円玉持ってる?」

「あるわよ、けどじゅんちゃん聞いてよ」そう言いながら財布から十円玉を一つ取り出してわたしに渡してくれた。

「ありがとう」わたしは公衆電話ボックスのドアを開いた。

健ちゃんの家の電話番号を何とか思い出し、誰かが異様な力でたたいて楕円に変形しているダイヤルを急いで回した。電話機が壊れていないことと健ちゃんが在宅していることを祈った。健ちゃんは正月のたこ揚げで糸がからまって豊島小学校の連中と喧嘩したときも勝ったことがある。応援にきてくれれば百人力だ。宝物も取り返してくれるだろう。息が切れていて苦しかった。どきどきしながら電話に反応があるのを待った。コール音が数回あったがなかなか応答がない。電話番号が違っていたのだろうか。諦めようとした瞬間、女の声が応答した。

「はい、福井です」姉の珠恵さんに違いなかった。

「木村潤ですけど、健ちゃんいますか」いつもとは違う早口で言った。

「あら、じゅんちゃん、今晩来るのよね、カレーライスを作っておいたからね。ご飯もあるからかけて食べるだけになってるわよ」いつものわたしの体を全体に包むような優しくこもった声だった。大好物のカレーライスだったが、そんな珠恵さんの言葉がまどろっこしく思った。わたしにとって一番の関心時は、健ちゃんがいるのかどうか。それだけを答えてくれればいい。続けて珠恵さんが話そうとするのを遮って「すいません、健ちゃんお願いします」わたしはぶっきらぼうに言った。珠恵さんの夕食の話に反応する余裕はなかった。

「ちょっと待ってね」珠恵さんが健ちゃんを呼ぶ声が電話口にも聞こえた。「よかった、家にいるんだ」ほっとしたけれど健ちゃんが電話口にでるまでが数時間に感じられた。

「おう、なにしてるの」健ちゃんの声はわたしを勇気百倍にさせた。

「豊島小学校の奴らと喧嘩になりそうなんだ、すぐ来てよ」

「よくやるよ」

「中学生もいるんだ、奴ら泥棒なんだ」

「カツアゲか?」

「まあ、そんなとこ」

「場所は?」

「イッセンバシ」

「待ってろ、すぐ行く」

電話を切った後振り返ると、久美ちゃんが心配そうにわたしを見ていた。

「十円、明日返すから」

「そんなのいいけど、宝物盗まれたってどうゆうこと?」

「久美ちゃん、今日の遊びは中止だ。ごめん、うちに帰っててくれ」

「そんな」

「じゃあ、オレ行くから」

「ちょっとそんなのないでしょ」

「ともかく今日は家に帰ってよ」

「なによ。人の話聞かないんだから」

久美ちゃんの不満げな声を聞き流してわたしは現場に急いだ。わたしが戻ると話し合いはこじれているのはすぐわかった。健ちゃんがここまで来るのにかけだしてきて五分、自転車で三分と言うところだろうか。それまでは何とか持ちこたえなければとわたしは思った。

「言いがかりをつけるなよ。なんか証拠があるのかよ」

「盗んだもの早く出せよ」

「知らねえていってんだろ」恫喝して小川が言った。

「それよりこないだは世話になったなあ」

「なんのことさ」

「うどん粉のことだよ」ランニング姿のちびが言った。

「お面なんかかぶりやがって、卑怯なやろうどもだ、もっと正々堂々とやったらどうだ」小川がすごんだ。

「オレたち縁日に行ってないよ」クジラが言った

「縁日? 何で縁日の喧嘩のこと知ってるんだ」

まずい、クジラのやつ墓穴を掘った、馬鹿だなとわたしは思った。

「うわさで聞いたし」クジラが反論したが明らかに形勢は不利だった。

「それこそ証拠がないよ」住友も続いて反論したが、ますます向こうのペースにはまっていた。

クジラは小川に胸ぐらを捕まれていた。住友は中学生にこづかれそうになっていた。

「ちょちょっと、話し合おうぜ」時間稼ぎにわたしが言った。

「何だおまえ、また来たのか、さっき逃げたくせに」

「逃げてなんかいないよ。なんだよ。その言いぐさは!」わたしも頭に血が上ってきた、もう話し合いの余地はなかった。

そのとき健ちゃんが駆けつけてきた。

「ああ、健ちゃん」

「何があったんだ、小学生をいじめるのは良くないな」と余裕のある低い声で言いながら近づいてきた。背は向こうの中学生よりも高かった。胸幅だって広い。

「オレに任せろ、大将は誰だ」健ちゃんが訊いた。

「あの、ひげ面の中学生のヤツだよ」わたしが深沢の方を指して言った。

「何しに来たんだ? よけいなやつはひっこんでろ」深沢が顔に凄みを利かせながら怒鳴った。

「おまえが、リーダーか? とった物返してやれよ。どーせたいしたもんじゃないんだろ」

「こいつらが盗ったんだよ」クジラが叫んだ。

「だから知らねって、証拠もないくせに」小川が深沢の後ろから顔を出した。

「富田に聞け、やつが知ってるはずだ、裏切りやがって」

「裏切るも何もないさ。いっとくけどオレ、一度もおまえたちの仲間になったことないぞ」富田はふてぶてしかった。

「それより縁日の落とし前つけてくれよ」

「てめえたちが縁日にいたのはわかってんだよ」長谷川が言った。

「とったもの返せよ」クジラはそれには答えず同じ言葉を繰り返した。

3

話し合いはつかなかった。

「おまえの親父いま刑務所だってな」いきなり黒縁メガネのチビがクジラに向かって切り出した。そして後ろにひっこんだ。

「大塚の高利貸し刺して捕まったんだって?」長谷川が付け加えた。

「こんど、盗んだ金で家建て直して御殿にするらしいぜ」小川も言った。

「てめえら、かってなこというな」住友がクジラをかばった。

「話をそらすなよ」わたしも応戦した。富田のヤツが吹聴したに違いない。

「刑務所ヤロウ、何とか言って見ろ!」小川がクジラに向かって挑発した。

クジラの鼻に汗がにじみ、顔はどす黒く、そして赤味が増していった。怒りを通り越し驚愕しながら手をこぶしに握って震えている。

突然クジラが叫んだ。「おまえら、きたねーぞ!」そう言って小川に体当たりした。そして頭を垂直に勢いよく持ち上げ、相手の顎に激しい頭突きを食らわした。小川はもんどり打って倒れた。口の中を切ったのだろうか血が出ていた。続けて長谷川に捨て身で体当たりした。

「おまえら、ちょっと待て」健ちゃんが叫んだけれどもう戦いは始まってしまった。小川が立ち上がり今度はクジラのことを思いきり蹴り上げた。クジラは「ぐえ」と低い悲鳴のような声を出してその場にうずくまった。

クジラを助け起こそうとわたしが近づくと、今度は長谷川がげんこつを作ってわたしに向かってきた。わたしはとっさに後ずさって落ちていたこぶし大の石を拾った。長谷川の顔めがけて投げつけると石は逸れて後ろにいた深沢の目の上に当たった。薄くて消えそうな眉毛の上から血が吹き出た。それを見た長谷川はひるんで数歩下がり深沢を気遣った。深沢は目に右手を額に当てた。手にはべっとりと血が張り付いた。指の間から流血の後がくっきりと見えた。

「やっちまえ」深沢が般若の形相で叫んだ。彼らは腰を低くして戦闘態勢に入った。わたしたちも一斉に喧嘩の構えをした。わたしは周辺の石をまた拾い身構えた。

そのとき中学生の深沢がポケットに左手を突っ込んだかと思うと光る物を取り出した。ナイフだった。そしてゆっくりと右手に持ち替えていつでも相手を斬りつける勢いのように見えた。

「石を投げたヤツ出てこい」と深沢が言った。わたしは全身で身震いした。

ナイフの刃は十数センチくらいあっただろうか鈍く光っていた。わたしたちは予想外の展開に足が凍り付いた。そして助けを求めるように健ちゃんの方を振り返った。健ちゃんはわたしたちに下がっているように手で合図した。

「本当にやる気なんだな」健ちゃんが落ち着いた低い声で言った。その声でわたしたちも少し安心した。

「ああ、切り刻んでやる」深沢が言うと同時にナイフを健ちゃんに向けてちらつかせた。そして素早い動作で健ちゃんに斬りつけてきた。健ちゃんが振り払ったときナイフの刃の先端が二の腕をかすめた。一直線に血がにじんだのが見えた。

「いてっ!」健ちゃんがかすかに聞こえる声でつぶやいたのが聞こえた。わたしはやつが本気だと思った。まずいことになったことを改めて感じた。深沢の顔は真っ赤に充血して、額からはまだ血が固まらずに滴っていた。深沢は見るからに偏執的で怒ると何をするかわからない性格のようだった。この喧嘩は収まりがつかないと思った。

そしてその後とても信じられない光景が展開したのだ。健ちゃんもお尻のポケットからジャックナイフを取り出した。刃渡りは深沢のよりも短かったが、刃はよく手入れされているようでより輝いていた。

「よし、やろうぜ」

「健ちゃん!」わたしは止めるのか応援するのか何とも曖昧な声で呼びかけた。

「じゅん、おまえたちはひっこんでろ」健ちゃんもこれまでに見たこともない形相に変わっていた。たぶん、ナイフの喧嘩は見たこと無いから健ちゃんだって初めてなのじゃないかと思った。わたしの不安は広がった。

ナイフの二人はしばらく動かなかった。最初に動いたのは深沢だった。ナイフを突き出すが腰が引けていて健ちゃんに届かない。わたしはアメリカ映画の中に自分がいるように感じた。ジェームス・ディーンが健ちゃんで相手が非行少年グループだ。健ちゃんは中学生だけれども髪をリーゼントにしてアメリカの若者を気取っていた。長い髪はいつも持ち歩いている櫛で流れるように分けられ映画の雰囲気にもあっていた。「理由なき反抗」の喧嘩は拮抗していた。でもこの喧嘩は健ちゃんの方が圧倒的に有利だった。健ちゃんは落ち着いて相手の動きを見ていた。深沢が思いきり顔をめがけて切りつけてきたが健ちゃんは軽いフットワークでこれをかわした。相手が攻めあぐねているのを見ると、一度相手の顔を切りつけるフェイントを見せて、相手が顔を背けたスキに健ちゃんのナイフは深沢の足をねらい、深沢の太股にナイフが浅く刺さった。深沢はよろけて少しひるんだ。

「ほれ、どうした? 今のは手加減したんだぞ」余裕を持った健ちゃんの声が聞こえた。深沢は完全にビビッている。それを見てこの喧嘩は収まりそうだとわたしは安堵しかけた。

クジラはうずくまってじっとしていたが、何を思ったか急に飛びだして来て深沢に体当たりした。

「やめろ!」健ちゃんが言ったが、クジラは聞かなかった。

「ふざけやがって、ふざけやがって!」クジラは何度も同じことをを叫びながら、次々に彼らに体当たりと頭突きをしていった。相手から何度も殴られても動じなかった。次の瞬間、クジラは深沢からナイフを奪い取ると斬りかかっていった。完全にクジラは狂っていた。そして深沢に向かってナイフを突き立てたまま体当たりをした。ナイフは深沢の腹に刺さり「ぐえっ」と言う嗚咽にも似た悲鳴が聞こえた。深沢はうつぶせに道路に倒れた。クジラは小川にも体当たりして、すもうの押し出しのように崖に向かって突き進んでいった。二人はそのまま崖の上で坂に足をとられ一気に下まで落ちていった。

そのあとは誰彼かまわず大乱闘になり、みな斜面を転びながら落ちていき相乱れの殴り合いになった。わたしも崖を駆け下りるというか、転び落ちながら乱闘に加わった。

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